the End of AnimeLife

『あまちゃん』感想文エッセイ同人誌を出しました http://eal.hatenadiary.jp/entry/amaj

あまちゃんとエヴァンゲリオン

 以下の文章は、あまちゃん同人誌アウトテイク。冬コミhttp://twitcmap.jp/?id=0085-3-RAh-46-aで何か新しい本を出すかも?


 『あまちゃん』は登場人物が多い。そしてキャラクターが濃い。美形ばかりが揃ったオールスターキャストとは少し異なるが、主役クラスが集まっていることに間違いない。これが筆者がこのドラマに圧倒された理由のひとつだった。
 『あまちゃん』を語る上で、圧倒的な情報量がすごいという評価があった。
 『あまちゃん』は語らずにはいられない作品だったという。どうして様々な語りが生まれたのか。『あまちゃん』の何が他と違っていたのか。それで思い出すのは『エヴァンゲリオン』のブームだ。
 まず、圧倒的な情報量が『エヴァンゲリオン』に似ていると感じた。物語の骨子は、アキの母親の春子が過去を清算すること。そして、アキが地元のアイドルになることだ。しかし、このドラマには、骨子以外の多くの情報が含まれている。展開が速いし台詞も多い。宮藤官九郎作品でおなじみの小ネタも膨大だ。
 朝ドラは、家事を行う主婦層に向けて画面を見なくても内容が分かるように作られている。前回のラストを冒頭に入れなければならない。ただでさえ15分でやれることは少ない。そう考えられてきた。そこで宮藤がやったことは、とにかく圧倒的に詰め込む。そして、要らない部分はばっさりと切る。それも『エヴァンゲリオン』に似ていただろう。
 しかし、自分が感じた『あまちゃん』と『エヴァンゲリオン』との関連とは、実はそれほど重要ではない。『エヴァンゲリオン』ではない他の作品との関連のほうが密接だということもあるだろう。どうしても『エヴァンゲリオン』に絡めなければならない必然性は特にない。自分が知っている作品が、たまたま『エヴァンゲリオン』だった。それだけの話だ。だけど、だから自分は『エヴァンゲリオン』に例えることしか出来ない。

 以下、筆者が『あまちゃん』と『エヴァンゲリオン』が似ていると感じる点。

アキの猫背
アキの髪型が綾波レイに似ている
「分かる奴だけ分かればいい」
圧倒的な情報量の多さと過去からの引用
その元ネタ探し
ヒットの要因のひとつに視聴者の深読みがある
語らずにはいられない
表のドラマと並走する裏のドラマ
繰り返しの物語
成長しない主人公(あまAで書いた)
「アキちゃん可愛い」だけでもいいし、物語の謎を考察もする(これは中森明夫が自分が見つけたことだと主張しているが視聴者はみんな気づいてた)

 ドラマの感想、考察、無数にちりばめられた小ネタの分析、視聴者同士の会話など。それらの語られ方や傾向が、他の話題作と比べて、『エヴァンゲリオン』のそれに似ていると感じた。テレビ番組のなかでメジャー志向が高いと考えられている朝ドラであるはずが、どうやら『エヴァンゲリオン』を見るような楽しみ方をしている視聴者がいたらしい。
 筆者は『エヴァンゲリオン』が好きだし、それならば自分も楽しむことができるだろうということで『あまちゃん』を見始めた。なるほど、『エヴァンゲリオン』をリスペクトするような内容では決してないのだが、これは面白い。
 すべての視聴者がそうではなかっただろうが、乱暴にいえば、『あまちゃん』は、おたく好みの作品だ。
 例えば、アニメに詳しいお笑い芸人のサンキュータツオが書く「あまちゃん論」(2013年5月11日, あまちゃんの今後(妄想)と「萌え」の問題, サンキュータツオ教授の優雅な生活, http://39tatsuo.jugem.jp/?eid=1233)を読むと、理屈っぽく(おたくのルールで)語ることが可能なこのドラマは、ブームになるだろう(多くの「あまちゃん論」が書かれることになる)と予感できた。
 ファンによるファンのための同人誌(のような商業誌)「あまちゃんファンブック」にも、そのようなおたく視点がみられたのは、非常に好ましい。

 筆者が『あまちゃん』を見るようになったきっかけのひとつは、「あま絵」だった。多くの漫画家がツイッターで『あまちゃん』を実況していた。自分が視聴者のツイッターを楽しいと感じたきっかけは、青木俊直こなみ詔子の「あま絵」だった。『あまちゃん』の登場人物を思い思いに描く「あま絵」。自分が最初に見た「あま絵」は、青木俊直による主人公アキの絵だった。彼女の特徴である猫背が可愛らしく描かれていた。それを見て、『エヴァンゲリオン』に出てくるロボット「エヴァ初号機」に似ているなあと少し感じた。エヴァ初号機も猫背が特徴だ。その後、その青木の絵を模した、アキを初号機に見立てた「あま絵」もアップされていて、そういう受容のしかた、面白がりかたがアニメファン(おたく)のようだと感じた。実際にアキは猫背で、演ずる能年玲奈も猫背だということを後で知った。
 単に猫背だという、最初はその程度のことだった。毎朝、ツイッターのタイムラインと合わせて『あまちゃん』を見ていて、『エヴァンゲリオン』に似ていると感じる点があった。ロボットは出てこないし人類補完計画も存在しない。しかし、そういうことではない。それは、繰り返しの物語だということだ。
 台詞の繰り返し。誰かが言った印象的な台詞を、ほとんど一字一句変えずに別の誰かが言う。そのことで視聴者は「この台詞って以前に誰かが言ってた」と笑いが起こる。春子が言った台詞をアキが言う。夏ばっぱが言った台詞を春子が言う。
 方言「じぇ」についてアキが海女軍団に訪ねた「もっと驚いたときは?」「じぇじぇじぇ」「増えるんだ!」、これが後にGMTメンバーもアキに対して繰り返す。忠兵衛の「ここが一番いい場所だってことを」も種市先輩が繰り返している。他にも無数にある。
 『あまちゃん』では、同じシチュエーションが何度も繰り返される。そして、生き方も繰り返す。かつて春子が田舎を毛嫌いして都会に憧れ、そしてアイドルになりたいという願望を、ユイは繰り返す。子育てに失敗したという夏ばっぱの無念を、春子は繰り返す。
 それらは、しつこく繰り返される。
 繰り返しという言葉は、悪い意味で使用されることが多いような気がする。「同じあやまちを繰り返す」「不毛な議論が繰り返される」などだ。ただし、繰り返しが気持ちいいこともある。例えば、ミニマルミュージックがそうだ。映画『ゴジラ』のテーマ曲のように、短いメロディを延々と反復するものをそう呼ぶ。アニメ『となりのトトロ』のBGMにもある。YMOの「体操」も。いわゆる「癖になる」というやつだ。

 『エヴァンゲリオン』は繰り返しの物語だと、庵野秀明は言った。

エヴァ」はくり返しの物語です。
主人公が何度も同じ目に遭いながら、ひたすら立ち上がっていく話です。

庵野秀明総監督 所信表明 : みんなのエヴァンゲリオン(ヱヴァ)ファンhttp://neweva.blog103.fc2.com/blog-entry-26.htmlより引用

 庵野の言葉を借りると「『あまちゃん』はくり返しの物語です。主人公が何度も同じ目に遭いながら、ひたすら立ち上がっていく話です」ということに、なるだろうか。